【レポート】Innovators’ Talk #42 MaaSが切り開く地方観光地の未来

 今回のi-Talkでは東急電鉄のMaaS事業を担当する森田創さんに、伊豆半島で展開するIzukoの立ち上げについてお話し頂きました。

 MaaSとは「スマホひとつで移動や観光ができる」サービスということで、様々な産業の事業者の連携が必要です。ところが交通事業者は縦割りで縄張り意識が強く、これがなかなか難しいとのこと。また伊豆半島の高齢者はスマホ利用率も高くなく、アプリを発注したドイツの会社とのやりとりにも森田さんたちは苦悶します。実際MaaSは世界中で事業が立ち上がりつつ「本気で取り組ん得いる人は100~150人ほど」ということですが、まだ利益を上げるところまでいっているものはないという難易度の高い事業です。森田さんはこうした中、いくつもの難題に立ち向かい昨年Izukoを立ち上げ軌道に載せたのですが、その過程を詳細にお話し頂きました。

 それに加えて、この日は森田さんの大学以来のキャリアの話もして頂きました。大学時代には体育会アメフト部で日本一を目指して仲間とともに努力し、東急電鉄入社後は東急C&Cという会社で映画などのロケの場所を貸し出す事業を始めますが、このときにはシナリオの学校に通います。また、大型の劇場である東急シアターオーブの立ち上げ時には、演劇は素人だったそうですが年間200~300の芝居を見るという徹底ぶりでした。このような仕事に徹底的に向かい合う姿勢や、部活や仕事を通して身につけた人との関係性の築き方などが、現在取り組まれているMaaS事業に存分に生かされていると思いました。

森田さんはシナリオの学校に通うことで執筆業への道も開け、現在はノンフィクションライターとしても活躍されています。『洲崎球場のポール際』(第25回ミズノスポーツライター賞最優秀賞)では、当時学生野球より下に見られていた職業野球が認知されるプロ野球草創期の様子を、丹念な取材により浮き彫りにしました。

『紀元2600年のテレビドラマ』では戦前から戦中にかけて日本で行われたカラーテレビ開発のドラマを描き出しました。

そして現在取り組まれているMaaS事業についても、ご自身で『MaaS戦記』という本を書かれ、赤裸々に新規事業立ち上げの様子を伝えています。こうした創造的な活動も本業での仕事への真摯な取り組みから生まれたものだと思います。

 今回の講演会ではこのように森田さんの仕事への情熱や理知的なビジネス戦略の展開などが参加者の皆さんに伝わり大変内容の濃いものとなり参加者の方は大変満足されていました。森田さん、素晴らしい講演をありがとうございました。

参加者の皆さんのアンケートより…

・書籍で感じた以上に熱く聡明な方でした。ありがとうございました。

・過疎地のMaaSに関心があり受講したのですが、生き方、ビジネスの進め方などいろいろな意味で刺激の多い講演でした。ありがとうございます。

・本日もとても興味深く拝聴させていただきました。森田先生の誠実なお人柄と情熱が仕事の結果にも繋がっていると思いました。このような講演会を設けてくださりありがとうございました。

・大きな構想を持ちつつ、ミクロな消費者の実態に合わせてサービス設計されている徹底度合いに感動いたしました。

・多くの示唆に富むご講演でした。『MaaS戦記』を読み終わって、コロナが収束したら、伊豆で実際にIzukoを使った旅行をするつもりです。

・本日も大変有意義な講演会に参加をさせていただき、誠にありがとうございます。森田先生のキャリアにおけるご苦労や努力、そして今もMaaSの普及に向けて挑戦されている点に、とても感銘を受けました。

・とても具体的なお話しで、最後まで興味を持って聞くことができました。ありがとうございました。

・新しいものを作り出すという大きなハードルへの携わり方、ひとりではなく多くの人に協力を仰ぎながら運営していく術、興味深く聞かせていただきました。伊豆に行ってみたくなりました。ありがとうございました。

・進む道を決められるときに、しっかりと自分の意志でお決めになっている所に勇気をいただきました。

・ありがとうございました。MaaSは、各地域課題を解決するのに有効なアプローチであることは良く分かりました。また、森田さんの働き方についても大変共感出来ました。

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