今回は大阪大学/東京大学発のスタートアップである、パイクリスタル株式会社の代表取締役を務められた、伊藤陽介さんにご登壇頂きました。
伊藤さんはパイクリスタル社を株式会社ダイセルに売却後、代表取締役を退任し、次の起業準備をしていましたが、ちょうど講演のこの日(2021年7月1日)の午前中に、新しく立ち上げたスタートアップであるキュエル株式会社の登記を行ったということでした。キュエル社はやはり大阪大学発のスタートアップで、量子コンピュータ向けの制御装置の開発や事業化を行っていきます。
この日は伊藤さんの生い立ちから現在までの歴史を振り返りながら、スタートアップに関するトピックを中心にお話し頂きました。
特に、伊藤さん自身が取り組まれてきた研究開発型のスタートアップは、技術的に可能かどうかわかっていない状態から始めるために、リスクやコストも大きいですが、うまくいった場合には産業構造を変え、社会に大きなインパクトを与える可能性を持つこと、大企業ではできないことに取り組むということの重要性や醍醐味を説明されました。
伊藤さんは、学生時代に東大のアントレプレナー道場という講座に参加して新しい事業をつくることに興味を持ち、まずは経営を学ぶためにコンサルタントになりました。その後、事業会社勤務を経てアメリカのMITにMBA留学するなど、実践的に経営の経験や知識を得た後に、パイクリスタル社の代表取締役に就任します。
スタートアップの経営者になってからは、「多くの人に断わられ迷惑をかける」、「多様な課題を、限られた情報で、自分の責任で、高速に処理しなければならない」、「社内での難しいマネジメントが要求される」など、難易度の高い経営課題に直面し苦労も多かったそうですが、同時に「スタートアップの経営者としての勘所」、「ビジネスパーソンとしての全方位的な知識や経験」、「意味のある人脈」などを得ることができ、ご自身が最も成長できた期間でもあったということです。
これまでいくつかの職業を経験された伊藤さんですが、スタートアップの経営は「ダントツで大変」でしたが「ダントツでエキサイティングで『生きている感じがした』」とのことです。
その理由は、「自分の責任ですべてを決めることができる」、「自分の働きたい人をチームの中に入れて、自分が働きたいと思える組織を作ることができる」、「多様な課題を扱うことで、ビジネスパーソンとして能力が研ぎ澄まされる」、「やっていることが難しければ難しいほど、優秀な人が来てくれるし、多くの支援を受けることができる」、「成功したときのリターンが大きい」などだそうです。
この日から、再びスタートアップの経営者として新たな挑戦を始められる伊藤さんからスタートアップの醍醐味をお伝えいただき、参加者の皆さんのキャリア観にも影響のある、大変有意義な講演会でした。
参加者の皆さんの感想より…
- スタートアップ経営はやっばり大変なことが多いがやりがいがとてもある仕事なんだなと思った。
- 自分の好きなものを理解して、自分自身の価値観を作る事の大切さを理解した。
- 大学時代の過ごし方についてのアドバイスとしておっしゃられていた、“自分の価値観を形成する”こと、“大学生の特権を生かして、経験を積む”こと、“利害関係なく将来的に付き合うことができる師匠、友達を作る”ということが印象に残りました。