【i-Squad採択】ZIKANOシャツ ― 素肌に直接着られるインナー一体化型シャツ ―(代表:川口小太朗)

目次

活動紹介

「ZIKANO(ジカノ)シャツ」は、インナーを着ることなく素肌に直接着られる、前開き型の一体型シャツです。一般的なシャツとは異なり、肌着としての機能を内蔵しており、汗を吸収しやすく、肌ざわりの良い素材を採用しています。インナーを重ねる必要がないため、着替えや洗濯の手間を減らしつつ、外出着としても違和感のないデザインを実現しました。

 本製品の最大の特徴は、肩を大きく動かさずに脱ぎ着できる点にあります。腕を上げる「バンザイ姿勢」を取らずに着替えが可能であるため、過労や怪我などで肩の可動域が制限されている方、また介助を受けながら着替える方にとって、身体的負担を軽減することができます。さらに、暑い季節に重ね着を避けたい方や、汗の貼りつきに悩む方にとっても快適な選択肢となります。

 現在は、既製品を改良した試作品の開発段階にあり、布地の厚みや吸湿性の違いを比較しながら、最適な素材構成と縫製方法を検討しています。試験的に複数の生地を組み合わせ、インナー機能をどの程度まで統合できるかを実験中です。  将来的には、介護・医療現場における着替え補助の負担軽減、および一般ユーザーの日常生活における快適性の向上を目指し、社会実装を推進していきます。単なる衣服ではなく、「自分で着替えられる喜び」や「汗を気にせず動ける快適さ」を提供する生活支援型ウェアとして、実用性とデザイン性の両立を目標としています。

プロジェクトに対する想い

 このプロジェクトの原点は、祖父が汗で肌に張り付いたインナーを脱ぐのに苦労していた姿を見たことにあります。高齢になると、肩や腕の可動域が狭まり、わずかな動作でも痛みや不安を感じることがあります。祖父はそのたびに人の手を借りており、その光景から私は、「着替える」という行為が時に自立を奪うものにもなり得ると感じました。日常の中のほんの数秒が、実は大きな心理的・身体的負担となっている——その現実を目の当たりにした経験が、ZIKANOシャツを構想するきっかけとなりました。

 同時に、私自身も汗をかきやすく、暑い季節に「シャツの下にTシャツを重ね着する」ことの煩わしさを感じていました。肌に張り付いたインナーを脱ぐ手間や不快感は、年齢や体力に関わらず誰にでも起こる小さなストレスです。つまり、このプロジェクトは介護や高齢者支援の枠を超え、「誰もが快適に着られる衣服」という普遍的な課題に向き合う取り組みでもあります。

i-Squadでの抱負

i-Squadでは、単なるアイデア発表の場としてではなく、「製品を社会に接続するための実験の場」として活動を進めていきたいと考えています。これまで個人で進めてきた試作品づくりを、異なる専門分野の参加者の皆さまと共有し、素材・デザイン・利用環境という三つの側面から多角的に検証していくことを目標としています。

 ZIKANOシャツは、一見するとシンプルな“シャツの改良”のように見えますが、実際には衣服設計・素材工学・身体動作の理解・福祉的支援といった複数の領域が交差するプロジェクトです。i-Squadという多分野協働のプラットフォームにおいて、こうした多角的な視点を持つ人々と出会い、議論し、磨き上げていくことで、より実践的で社会性の高い製品へと発展させたいと考えています。

 今後は、介護・医療現場に関わる方々との連携を視野に入れ、実際の使用状況を踏まえた改良を重ねていきます。同時に、一般ユーザーにとっても自然に着られる「日常性のデザイン」を大切にしながら、機能性と快適性を両立させる服づくりを追求していきます。  i-Squadでの一年間を、試作を重ねるだけでなく、価値を社会に伝えるための一年にしたいと考えています。プロジェクトの進化を通じて、「人が服に合わせる時代」から「服が人に寄り添う時代」への転換を目指します。

目次
閉じる